実家を相続したけど 

親が亡くなり遺産を相続する際、不動産は物理的に分けることが難しいため「誰がどのくらい相続するか?」で揉めてしまうことが多いようです。
遺産相続で揉めるというと、一部のお金持ちの間で起こるものだと思ってしまいがちですが、実際には令和3年の司法統計年報によると、裁判所に遺産分割の事案で持ち込まれた件数の総数は6934件で、遺産の総額が1000万円以下のケースが2279件(約33%)、1000万円超5000万円以下は3037件(約44%)と身近に起こるトラブルなのです。

では、不動産の相続ではどのようなトラブルが起きやすいのでしょうか?
今回は不動産の相続でよくあるトラブルと予防策をご紹介していきます。

不動産の相続方法

現物分割 遺産を種類ごとに相続

例えば、配偶者が自宅、長女が株式、長男が預貯金というように種類ごとに分け合う方法です。ただ、財産価値がそれぞれ違う為、納得しないと相続人同志の争いになる可能性がありますが、遺産のほとんどが現金や預貯金である場合には適しているといえます。
<デメリット>遺産が不動産と預貯金など、財産価値が違うと争いになりやすい

代償分割 各自の相続財産が公平になるよう金銭で調整

例えば、長男が実家、4,000万円を相続、次男が預貯金1,000万円を相続した場合、3,000万円もの差額が生じます。そこで法定相続分に従うと、それぞれが受け取れる金額は2,500万になるので、長男が次男にに不足分である1,500万円をポケットマネーから支払い不足分を補います。
<デメリット>不足分をポケットマネーで補える財力が必要

共有分割 相続した不動産を相続人全員で共有する

共有分割とは、「相続した不動産を相続人の間で共有する」ことで分割することをいいます。
共有分割は遺産分割の方法がなかなか決定しないケースなどに用いられます。
例えば長女と次女で実家を相続する場合、それぞれ1/2に設定し権利を共有します。
どちらも持ち分に応じた権利を主張できますし、自宅を処分する必要もありません。
しかし、共有分割の状態で相続が発生すると、子供や孫の代まで引き継がれてしまう為、ねずみ算式に相続者が増え売却が困難になる可能性があります。
将来的にはトラブルの原因になる可能性が高い為、安易に選択しない方が良い方法ともいえます。
<デメリット>ねずみ算式に相続者が増え、将来的にトラブルになりやすい

換価分割 不動産を売却し、売却代金を分け合う

相続した自宅を売却し、売却代金を相続人全員で分け合う方法。自宅を残すことにこだわりが無ければ、最も相続争いが起こりにくい方法です。
<デメリット>家を売却しなければならないので、居住を希望する相続人がいる場合は不向き

<ケース1>現在住んでいる相続人がいる

現在住んでいる相続人がいる|不動産相続トラブル
  • 被相続人:
  • 相続人:長女(同居)、長男
  • 遺産:自宅(時価:4,000万円)、預貯金1,500万円
  • 発生した相続トラブル
    長男と長女で遺産分割協議を行う際、長男が法定相続分である50%を主張。
    しかし、長女は今後も自宅に住み続けることを希望し、貯蓄額1,500万円だけにしてほしいと主張したが、長男は50%をあくまでも要求し相続トラブルに発展。
  • 原因
    相続発生後に空き家になるのであれば、売却して換金したお金を分けることが出来ます。
    しかし、このケースでは引き続き移住を希望しており、相続の為に立ち退く意思が無いため売却は難しいということです。
    自宅を相続する相続人の相続割合が多くなり、不平等な内容になり、トラブルに発展しています。
  • 予防策
    父が生前に自宅を長女に、預貯金を次女に相続させるという内容の遺言を残しておけば長女はそのまま家に住み続けることができます。
    また次女は、法律上最低限認められている権利である遺留分も法定相続分である1/2の半分の1/4となりますので、総財産5,500万の1/4は1.375万で相続分1,500万はそれを上回っているので、次女は自宅分の権利を主張できなくなります。

<ケース2> 同居して介護をしていた相続人と任せっきりの相続人

リースバックは、住み慣れたお住まいに住み続けられて、自由に使えるお金が手に入るメリットがあります。

同居して介護をしていた相続人と任せっきりの相続人|不動産相続トラブル
  • 被相続人:
  • 相続人:長男(同居)、長女 
  • 遺産:自宅(時価3,500万円)、預貯金2,500万円
  • 発生したトラブル
    長年父の面倒を看て、最期を看取ったのは長男とその家族。長女はめったに顔も出さなかった。しかし、法定相続分の1/2の権利を主張。 長男としては納得がいかず相続トラブルに発展。
  • 予防策
    1. 遺言書を書いてもらう
      相続において自分の権利を守るためには、遺言書を書いてもらうべきです。遺言書があれば、後から他の兄弟が口出しすることはできず、スムーズに相続することができます。
    2. 生前贈与してもらう
      父親の生前に一部を贈与してもらい、特別受益の持ち戻し免除の意思表示をしておいてもらえば、残りを長女と1/2で分けたとしても長男は生前贈与を含めると多くの遺産を受け取ることができます。
    3. 負担付死因贈与契約を結ぶ
      負担付死因贈与契約とは、贈与をする方が贈与を受ける方に何らかの義務、死因贈与契約に負担が付いた契約です。 この場合だと、「〇〇円贈与する代わりに、自分が亡くなるまで介護してほしい」などと契約を交わします。 また遺言書と違って、被相続人と契約を交わした者の同意が無い限り内容の変更はできないので安心です。

<ケース4>相続した実家を長年放置し、近隣住民とのトラブルに

相続した実家を長年放置|不動産相続トラブル
  • 被相続人:
  • 相続人:長男
  • 遺産:自宅:田舎の為、不動産価値が低い
  • 状況:実家を相続したが、そのまま空き家として放置したら老築化が進み、景観も悪化してしまい、近隣住民とのトラブルに発展。
  • 発生したトラブル
    実家を相続したが、そのまま空き家として放置したら老築化が進み、景観も悪化してしまい、近隣住民とのトラブルに発展。
  • 予防策
    相続した家をそのまま放置しない。
    所有しているだけでも固定資産税が発生します。 放置された空き家のうち、倒壊や衛生面で周辺環境に深刻な影響を与える物件は、自治体から「特定空き家」に指定されると固定資産税が6倍に上がるので注意が必要です。
    また、解体すると固定資産税が上乗せになるので、この点も注意が必要です。
    家が建っている土地は、固定資産税が最大1/6になる優遇措置が取られています。
    この措置は更地になってしまえば適用外となるので、今の固定資産税が大幅に増えることになってしまいます。
  • 対応策
    1. 売却する
      不動産業者への直接買取や不動産業者の仲介を利用した売却などが考えられます。 不動産会社に仲介してもらい個人へ売却すると、時間はかかりますが比較的高く売れる可能性があります。 一方、不動産会社に直接買い取ってもらう場合は、売却までの期間は比較的短くて済みますが、値段は下がります。 まずはインターネットの不動産一括査定を利用してみるとよいでしょう。 また、田舎や遠方の場合、田舎の物件に特化した不動産会社に依頼すると売却しやすいかも知れません
    2. 寄付する
      ・個人へ寄付する
      ・自治体へ寄付する
      ・法人へ寄付する
      ・貸し出す
    3. 相続放棄する
      ただし、相続放棄するには全ての財産を放棄する必要があります。
      また、相続放棄は相続があったことを知った日から3カ月以内に判断しなければなりません。

<ケース5>名義に関するトラブル

不動産名義に関するトラブル|不動産相続トラブル
  • 被相続人:
  • 相続人:母、長男、次男
  • 遺産:自宅(時価3,500万円) 預貯金:2,000万円
  • 状況:実家を相続したが、そのまま空き家として放置したら老築化が進み、景観も悪化してしまい、近隣住民とのトラブルに発展。
  • 発生したトラブル
    父が亡くなり、遺産を整理する段階で敷地が祖父名義のままだったことが判明。 父の存命の兄弟2人と、他界している長男の妻、その子供2名、そして母、長男、次男の8名になり、遺産分割協議が難航してしまった。
  • 予防策
    相続登記を済ませないで放置しておくと、相続人は雪だるま式に増え、遺産分割協議をまとめることが困難になります。 相続手続きの原則は「速やかに行う」ことが原則となります。
    生前に不動産の権利関係を確認し、名義変更をあらかじめ済ませてもらうようにしましょう。

まとめ

相続トラブルは一般家庭でも頻繁に起こるトラブルで、決して他人事ではないという自覚を持ち、生前に予防対策をすることが必要です。 この記事でご紹介した情報が少しでもあなたのお役に立てることを願っています。 

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